私は現在休職中の身だが、去年までは連日のように満員電車に揺られ、勤務先に向かっていた。もはやそれは『蟹工船』さながらの、すし詰め状態の如し様態である。「勤務」という監禁された生き地獄を眼前に、浮かぶ通勤者の表情は敗北が確定している戦場に向かうかの如く、殺気に満ちている。
都会の人間からすればすでに見慣れている「満員電車」。今回はその社会問題に焦点を当てた記事(東洋経済オンライン)が話題になっていたので、それについて思いの丈を述べていきたい。尚、話題になったのは3日前の11/5(月)である。
該当記事は以下の通り。
マナーという名の同調圧力
まず、特に都市部において通勤(=痛勤)ラッシュが常態化している原因から考察していきたい。結論から話すと以下が挙げられる。
①企業の都心集中
②都心と地方の賃金格差
③投資家至上主義によるサービスの低下
①は言わずもがなである。
②は地方の大学生が卒業後、都心の企業への就職を希望する者が後を絶たない現状からも推察できる。彼らは幼少期から先人達から「都心企業に就職した方が有利」と刷り込みを受けているかの如く、地方企業を避けている。
③は、資本主義の末路ともいうべきであろうか、悲しいかな一般消費者は二の次に回されている。
あくまでも私の一意見であるため、事実は分からない。分かっている事実はただ一つ、「マナー」というオブラートに包みこんだ表現で正義を振りかざし、同調圧力を仕掛けている日本人がいるということである。つまり、マナーとルールを履き違え、マナーをルール化しようとする輩が存在しているということである。
ここではまず、「ルール」と「マナー」について明確に区別しておきたい。両者の定義は以下の通りである。(Wikipediaより引用)
ルール:
規則と同義である。法の一形式であり、命令に含まれる。その制定権及び所轄事項は「法律」で定められる。
マナー:
行儀・作法と同義である。社会の中で人間が気持ち良く生活していくための「知恵」である。
つまり、両者の決定的な違いは裏付けとなる根拠であり、ルールは「法」、マナーは「知恵」を根拠元としている。したがって個人の主観で解釈されたマナーを、ルールであると誤解しているということが問題となるのである。この前提条件の元、話を進めていきたい。
一般的に、人が密集する場所・空間には「ルール」が定められることが多い。ルールを定める主な目的としては個々人が感じる「不快」を減らすことにある。該当記事では、「満員電車の中ではリュックが邪魔になる」という主張を展開しており、これは客観的データに裏打ちされた事実でもある。したがって当然個人レベルで対策していく必要性が出てくるわけだが、現代人は言葉を用いて解決しない人が多いと感じている。
というのも、該当記事のコメント欄では「相手の逆ギレが怖いため伝えられない」という主張が散見されている。しかし、それは心理学者アルフレッドアドラー流に解釈するのであれば、「どう思うかは他者の課題」となるだろう。
日本人である以上、日本語という手段があるのにも関わらず、それを看過し伝えないでいるのは「リュックが当たって不快な思いをしていることからの回避」よりも「相手の逆ギレを回避」することを優先してしまったからに他ならない。それなのに、伝えられないことを正当化することは、単なる言い訳でしかない。
また、「リュックで不快な思いをしたから、これからはリュックで通勤・通学するな」という論理も幾ばくか飛躍している。一部を見て全体を語る(=一般化して主張する)のではなく、その一部に対して抜本的に対策を講じるべきである。これだと、「知り合いのオタクは気持ち悪いから、オタクは嫌いである」と愚痴を吐いているのと変わらない。
繰り返しになってしまい申し訳ないが、該当記事で述べられているマナーは同調圧力でしかない。良くも悪くも日本人気質である。都心の通勤者にとっては、混雑した車内は日常茶飯事なのかもしれないが、地方の人間から見ればイレギュラーな事態であり、イレギュラーの中から生まれた暗黙的規則など知る由もない。
彼らが主張する「マナー」が「ルール」であるのならば、それは自らの主観によって生まれるものではなく、主観を超越した共通原理によって定められるべきだ。
では、どうすれば良いか
前項で私は「個人レベルで対策を講じるべきだ」との主張を展開した。もちろん、即効性があるのは個人レベルの対策であるが、この社会問題は「国家レベル」「企業レベル」「鉄道会社レベル」「個人レベル」に分けて考えていくべきである。素人目線ではあるが、各々以下の対策を検討してみてはいかがだろうか。
①国家レベルの対策:
・働き方改革(時差Bizを含む)の強力な推進
②企業レベルの対策:
・フレックスタイム制の使用権限を増やす
・在宅勤務制度の導入
③鉄道会社レベルの対策:
・「リュック税」の導入(基本交通費より割増)
④個人レベルの対策:
・通勤時間帯を早める
・電車以外の通勤手段への切り替え(ex.タクシー)
私からは以上。